クズ澱粉の本来の諸性質を知る目的で, 対照としてサツマイモ澱粉を用い, 澱粉の一般的理化学的性質と澱粉ゲルの物性について検討した. クズ澱粉のアミロース含量は22.4%で, サツマイモ澱粉の2-3%よりやや高く, 平均粒径は, クズ澱粉がやや小さい.X線回折図形はクズがAに近いC, サツマイモがC図形であった.フォトペーストグラフィや示差走査熱量計による糊化開始温度は, クズ澱粉がやや低い傾向を示した. アミログラム特性では, クズ澱粉は粘度立ち上がり温度がやや低く, サツマイモ澱粉に比べて粘度上昇カーブが湾曲し, ゆるやかに, 時間をかけて粘度を増すことが認められた.クズ澱粉の最高粘度はやや低いが, セットパックはサツマイモ澱粉よりも高かった.カードメーターによる測定では, クズ澱粉は粘稠性のある, サツマイモ澱粉は破断のあるゲル特性を示した.また, 自重によるゲルの歪みの測定では, クズ澱粉は小さく, 変形しにくいゲル構造をもっていることが認められた.テクスチャー特性では, サツマイモ澱粉はかたく, もろいゲルであるのに対し, クズ澱粉は, 凝集性の大きいゲルであることが示された. 官能評価の結果, クズ澱粉ゲルは弾力性があり, くずれにくく, 粘着性があり, 溶けるようなのどごしをもつことが, また, サツマイモ澱粉ゲルは歯切れがよく, くずれやすい特性をもつことが認められた.