豆腐の発酵食品として栄養学的にも興味のある豆腐〓について, 熟成過程中の有機酸の消長およびpHの変化を検討した.結果は次のとおりである. 1) 総酸量は豆腐〓および漬汁とも熟成が進むにつれて増加し, とくに著しい増加がみられたものは漬込みから1ヵ月めであった. 2) 豆腐〓の揮発酸量は熟成とともに増加し, 6ヵ月熟成豆腐〓では生豆腐の値 (21.61mg%) の約3倍に増加した.1カ月, 3カ月および6ヵ月の熟成過程における揮発酸の総酸に占める割合は10~14%の範囲であった. 3) 豆腐〓の有機酸組成として, TLCとPPCの併用によりクエン酸, 酒石酸, コハク酸, 乳酸および酢酸が確認された.イソタコ法でも電解質組成のシステム IIを使用することにより, これらの有機酸を確認し, 定量された. 4) 豆腐〓の有機酸中クエン酸, 酒石酸およびコハク酸は熟成が進むにつれて増加し, とくにクエン酸は著しい増加がみられ, 3ヵ月, 6ヵ月豆腐〓におけるクエン酸は全有機酸量の36%を占め最も多量に存在した. 5) 漬汁の熟成中における有機酸の消長は豆腐〓の有機酸の消長と類似しており, 各有機酸の含有量も豆腐〓の有機酸量に近い値であり, 熟成6ヵ月で全有機酸に対し35%のクエン酸を示した. 6) pHは熟成に伴って, 増加した有機酸により5.75から5.21と低くなった.