鶏の胸肉を0℃と10℃で貯蔵した際のアミノ酸, ATP関連化合物およびその他の成分の変化とそれらの変化がスープの味の強さに及ぼす影響を検討した. 貯蔵中に, 大部分の遊離および結合型アミノ酸, アンモニア, イノシン, ヒポキサンチンの量は, 温度に依存して増加したが, イノシン酸の量は減少した. イノシン酸とグルタミン酸の変化量は貯蔵時間にほぼ比例したので, 鶏肉スープの味の強さが両物質の濃度に主として支配されると仮定して, 両物質の混液の味の強さを示す山口の式 (S.Yamaguchi : J. Food Sci ., 32,473 (1967)) を貯蔵時間の関数に変換した.その式から, 味の強さが最高に達する貯蔵日数を算出したところ, 0℃貯蔵では7.86日であった.一方, シェッフェの対比較法を用いてスープの味の強さについての官能検査を行ったところ, 0℃で7~8日間貯蔵した肉のスープの味が最も強く, スープの味の強さはイノシン酸とグルタミン酸の濃度によって主として支配されているという仮説を支持する結果が得られた.