日本の家庭でよく作られる天ぷら, 野菜妙め, カレーの調理時に生じる臭気成分をTenax GCに吸着させ, GCおよびGC-MSによる分析で検討した.その結果, 天ぷら臭, 野菜妙め臭, カレー臭にそれぞれ115,107,104以上の成分が認められ, そのほとんどの主要ピークを同定または推定した.調理臭の, 居住空間へ及ぼす残存臭気の影響は, 調理臭により異なり, 天ぷら臭, 野菜妙め臭, カレー臭ではとくに天ぷら臭の影響が大きかった.臭気成分的にみても, 悪臭を有する共通な成分は少なく, 居住空間を汚染する悪臭成分は, 各調理の固有成分によるものと思われた.天ぷら臭気は臭気成分の種類, 生成量とも多く, なかでも, 油の酸敗成分である2-ペンチルフラン, ヘプタジエナールやデカジエナールの生成量が多い.これらの成分が天ぷらを揚げたあとに残存する悪臭の主因と思われた.油を使用する調理のさいには, 酸敗臭成分の除去だけでなく, その生成量を抑える調理法も有効と思われた.