物理化学的性質の異なる油脂5種 (ナタネ硬化油, パーム油, ヤシ硬化油, 魚硬化油, ナタネ油) を用いてクッキーを調製し, 生地ならびにクッキーの物性に及ぼす影響を検討した. 生地のクリープ曲線を解析して算出した粘弾性係数 (フック体の弾性率, フォークト体の粘弾性率, ニュートン体の粘性率) および油じみは, 用いる油脂の固体脂指数に依存しており, 固体脂指数が大きいほど, 生地は硬くて, 流動変形しにくく, 油じみは少ない関係にあった. クッキーのみかけの破断エネルギーおよびみかけの破断応力は, 油脂の固体脂指数が大きいと大きな値を示し, ショートネスに乏しい, 硬いクッキーとなる傾向を示した.しかしながら, 固体脂指数以外の要因の影響も無視できないことが示唆された.固型脂を用いたクッキーでは, みかけの破断エネルギーが小さいほど, 油じみは少ない傾向を示し, クッキーのショートネスに関与する要因の一つは小麦粉成分との親油性ではないかと推察された.