シュー膨化過程を経時的かつ全体的に把握し, その特微をバターケーキ膨化との比較によって明確にし, 合わせて空洞発生の時期とその原因を明らかにした. (1) シュー焙焼中の体積増加は, 初期にはほとんどみられず, 最も温度上昇が速いシュー底部が100℃に達すると, 増加速度は急激に大きくなり, 最終的に体積は4~5倍増加した.一方, 多孔質膨化食品であるバターケーキの膨化の様相はシューとは異なり, 沸点以上における体積増加はほとんどなく, 最終的に体積は約1.8倍の増加にとどまった. (2) 焙焼中のシュー内部では, シュー底部の温度が沸点に達すると, その位置に空洞が発生し最終的な大きな空洞へと成長した. (3) 昇温速度を変えると, シューの膨化率は変化したが, 空洞については標準加熱と同様に形成された. (4) 以上の結果から, シューにおける空洞発生の原動力は, シューペースト底部が沸点に達することにより急激に発生した水蒸気圧であることが明らかになった.これに伴い, 空洞形成における水蒸気を内包する物性の必要性も示唆された.