(1) 蒸らし時間が長くなるにつれ, 蒸発量は増加し, 炊き上がりの重量は減少した.しかし, 鍋の外に蒸発していく水分はしだいに減少し, 鍋のふたの内壁部に付着する水分が増加した. (2) 蒸らし時間の延長による鍋内空間部の温度低下により, もどり水が生じ, 鍋肌上部の飯の水分含有率はしだいに高くなり, 部位差が顕著になった.また, 鍋肌上部の飯はやわらかく, はりのない状態になった. (3) 蒸らし中の温度低下は, 蒸らし中および蒸らし後行う攪拌操作における水蒸気の放散の効率を低下させた.蒸らし30分 (空間部の温度75℃) のあたりからこの傾向は顕著にあらわれ, 蒸らし60分 (空間部の温度60℃) を過ぎると, ほとんど蒸発できなくなった. (4) 蒸発できずに残った水分を吸収した飯粒表層部の糊状物質は, 飯温の低下とともに流動性を失い, 飯粒同士を強固に接着させるものと思われる.その結果, 飯粒本来の粒としての特徴が失われ, テクスチャーの点での変化が顕著にあらわれた. 以上のような性状の変化は, 蒸らし30分 (飯層中心部85℃, 鍋内空間部75℃, 鍋ぶた内壁温度73℃) を過ぎたあたりから問題になることがわかった.これらの温度は, 保温機能付き炊飯器に設定された保温温度に近く, たとえ自動炊飯器を使用した場合でも, 蒸らし操作を適切な時期に終了しないと, 米飯の食味を損うことになりかねない.炊飯の最後は, 水分の蒸発が都合よく行える適温での蒸らし操作を心がけることがたいせつであるといえる.