小麦粉脂質がスポンジケーキの膨化に及ぼす影響を検討するため, 脱脂粉に小麦粉の遊離脂質, 非極性脂質区分および極性脂質区分の3種の脂質を, おのおの元の粉に含まれる量の50,100,150%添加した再構成粉を作製し, 粉の成分, 特性およびこれらから作製したスポンジケーキの特性を測定し, 次の結果を得た. (1) 脱脂粉はコントロールに比べ水との懸濁液の粘りが強い, 糊化開始温度が低いなどの特徴を有していた. (2) 脱脂粉に非極性脂質を添加した場合, 粉の性質はコントロールに類似したが, アミログラフの最高粘度と冷却粘度はコントロールよりも大きかった.これに対し, 極性脂質添加では, 添加による粉の特性の変化はほとんどなかった. (3) 再構成粉のケーキは, 脱脂粉に比べ最大膨化量と焼き縮み量が減少し, 比容積は増加した.比容積の増加には, 極性脂質のほうが非極性脂質よりも少量で効果があり, これは極性脂質添加ケーキの焼き縮み量が小さいことに起因する.同程度の比容積で比較した場合, 極性脂質添加粉のほうが非極性脂質添加粉よりも軟らかいケーキが得られた.