原料, 前処理法および抽出条件の異なる4種のゼラチンを用いて, ゾルの加熱が分子量とゲルの破断特性値に及ぼす影響をみて, ゼラチンの耐熱性について検討した結果を要約すると次のようになる. (1) ゼラチンの分子量は高分子側から低分子側に幅広く分布している. (2) ゼリー強度がほぼ等しい牛骨-アルカリ処理ゼラチンと豚皮-酸処理ゼラチンの分子量は, 前者より後者のほうが小さい. (3) 低温抽出ゼラチンと高温抽出ゼラチンの分子量は, 前者より後者のほうが小さい. (4) ゼリー強度がほぼ等しい牛骨-アルカリ処理および豚皮-酸処理ゼラチンゲルの破断応力はほぼ等しい. (5) 低温抽出ゼラチンゲルは, 高温抽出ゼラチンゲルより破断応力, 破断歪み, みかけの弾性率 (破断時), 破断エネルギーともに高い値となる. (6) 無調整ゾルを加熱した場合, 分子量は98℃まではほとんど変化がみられない. (7) pH3調整ゾルを加熱すると60℃くらいから低分子化が起こる. (8) 無調整ゾルの沸騰に伴うゲルの破断応力の低下は, 低温抽出ゼラチンのほうが高温抽出ゼラチンより顕著である. (9) pH3調整ゲルの破断応力は, 低温抽出ゼラチンでは無調整ゲルに近いが, 高温抽出ゼラチンの場合は, 無調整ゲルより低い値となる. (10) pH3調整ゾルを80℃以上で加熱すると, 破断応力は顕著に低下する.