痩せの情報がはんらんする現在, 自分の体つきを心のなかでどのように意識し, 自分に理想と感じる体つきをどのようにとらえ生活行動を起こしているかを把握するために, 日本人成人女子の母親と娘 (各278名) を対象に質問紙調査を実施し, 健康の観点から検討を試みた. (1) 体つきの意識について, 質問紙の回答を評定尺度化し, 各項目の平均値を求め娘と母親集団間の平均値の差の検定を行った.母親は娘にくらべ腕の太さ・胴囲・腹囲・腰囲・大腿最大囲を太めに, 胸部・腰部を厚めに, 脚の長さを短めに意識している.つぎに, 解析26項目を因子分析により検討した.娘と母親をいっしょに分析した結果では, 第1因子は大腿と腰部の太さの意識第2因子は胸部の大きさの意識, 第3因子は四肢の長さの意識であった.これら三つの因子について因子得点の平均値から娘と母親を比較すると, 第1因子に 0.1%の危険率で有意な差がみられ, 娘より母親が大腿と腰部の太さを強く意識している特徴がとらえられた. (2) 理想の体つきは誰を参考にしているかについては, 娘の約40%前後が外人や日本人のモデルに理想の体つきをみている.母親は20%前後が日本人の女優やモデルにそれをみているが対象が多種に分散している傾向がみられた. (3) 自分に理想と感じる体つきについて検討した結果, 娘と母親ともに現実値と理想値とが大きく隔たり, いずれも痩身志向が顕著であった.これら理想値からローラー示数を算出したところ, ヒトの平均値曲線からかなりはずれた極端な痩身志向が認められた. (4) 現代という消費経済のもとでは, みばえの良さに配慮する生活行動に主点がおかれ, 健康を損なうことも考えられる.賢い生活者にとって, 健康に関する正しい知識や認識の上に立てる科学的解析の構築が, 必要と思われる.