煮干しだし汁に含まれるうま味に関与する成分について, 沸騰および浸水による経時的な溶出量を調べ, だし汁の嗜好性との関連を検討した.煮干しだし汁のうま味および嗜好性に最も影響が大きかった成分は5′-IMPおよび5′-AMPであり, これらは闘値以下であるにもかかわらず有意に官能検査の結果に影響を与えた.乳酸は沸騰または浸水により増加し, これらもだし汁の呈味に関与していることが考えられた.しかし, だし汁中の有機酸の90%を占める乳酸の添加は官能検査の結果には影響を与えなかった.無機成分は沸騰, 浸水により著しい変化は認められなかったが, リン酸のみ経時的に増加した.このときリン酸は5′-IMP, 5′-AMPのうま味および好ましさを増強することが官能検査によって認められた.