酸化鉄粒子をモデル汚れとした系でのS-PVAの汚染防止作用, とくにS-PVAの低濃度領域での汚染防止作用について, おもにフィルムを基質として用いて検討した.結果は次のとおりである. (1) 布への粒子の付着状態を, ポリエステル布について電子顕微鏡で観察したところ, S-PVAの濃度の変化に伴って付着粒子の大きさが変化することが認められた. (2) フィルムの汚染条件を検討し, 酸化鉄粒子濃度を0.02wt%, 汚染時間を90分間, 温度を40℃とした. (3) フィルムの汚染性は, S-PVA溶液の濃度の増加に伴い汚染率が減少するという, 布の場合とほぼ同様な傾向を示した, しかし, S-PVAのきわめて低い濃度域 (1×10-4~1×10-3g/ 100ml) において汚染率が著しく減少した. (4) この現象は酸化鉄粒子の分散・凝集に関係があると考えられたのでその点について調べた. この結果, S-PVA溶液のきわめて低い濃度領域で著しい粒子の凝集がみられ, その濃度はフィルムの汚染率の減少する濃度とほぼ一致した. また, この酸化鉄粒子の凝集はS-PVAの粒子問の橋かけによって生じるものと推定された. (5) この結果から, フィルムにおいてS-PVAの低濃度で起きる著しい汚染防止効果は, おもに酸化鉄粒子が凝集することによって, 機械力によりとれやすくなったためと考えられる.