専業主婦世帯と共働き世帯の家計収支について8年間のデータを昭和62年基準にデフレートし, 各項目に対してt検定に基づく有意差検定を行った結果, 以下の諸点が明らかとなった. (1) 実数値で比較した場合, 収入面では実収入および繰入金, 支出面では実支出, 実支出以外の支出, 繰越金とも共働き世帯のほうが多く, 家計収支の規模は全体的に共働き世帯のほうが大きい.収入総額の両世帯の格差は, 専業主婦世帯の同額の1割強にあたる. (2) 構成比でみた場合, 収入総額に占める実収入以外の収入, および支出総額に占める実支出の割合が専業主婦世帯でより高く, 収支のバランスという点では, 専業主婦世帯のほうが相対的にゆとりが少ないと判断される. (3) 実収入のなかでは, 世帯主収入は専業主婦世帯のほうが平均で約3万5千円多いが, 共働き世帯における平均約9万円の妻の収入は世帯主収入の相対的な少なさを補い, 勤め先収入全体では共働き世帯のほうが多いという結果をもたらしている. (4) 消費支出および非消費支出については, 実数値でみると, 前者は共働き世帯のほうが多く, 後者には有意差が認められない.他方, 構成比でみると支出総額に占める消費支出, 非消費支出の割合はともに専業主婦世帯のほうが多く, 同世帯では, 家計における生活費や税金の負担が相対的に大きいことが明らかである. (5) 消費支出の内訳について実数値と構成比を合わせてみると, 総じて, 随意性の高い費目に対する支出は共働き世帯のほうが多く, 生活の基礎的支出は専業主婦世帯のほうが多い.また共働き世帯のほうが食料費支出の絶対額は多いにもかかわらずエンゲル係数が低いという結果より, 同世帯の生活の豊かさがうかがえる. (6) 実収入以外の収入, および実支出以外の支出については, 貯金引出は専業主婦世帯のほうが多いのに対し, 貯金は共働き世帯のほうが多く, この点からも両世帯の家計のゆとりの違いが明らかである.また, 保険の利用や信用買いに関する収支は, 共働き世帯のほうが多い.なお, 本報の一部は, 平成元年度日本家政学会第41回大会において発表した.