専業主婦世帯と共働き世帯の家計について相関係数, 所得弾力性の算定, および消費支出構造の比較分析を行った結果, 以下の諸点が明らかとなった. (1) 世帯主収入に対して, 両世帯共通に実支出, 実支出以外の支出, およびそれらの構成費目の多くが高い正の相関を示すが, 食料費は専業主婦世帯では同収入に逆相関を示すのに対し, 共働き世帯では無相関である.また, 家具・家事用品は専業主婦世帯では同収入に有意な正の相関を示すのに対し, 共働き世帯では無相関である. (2) 共働き世帯における妻の収入と各支出項目との相関関係は, 世帯主収入におけるものとほぼ同様であるが, 世帯主収入とは無相関であった電気代, 家事雑貨, 医療用品・器具, 交際費が, 妻の収入とは有意な正の相関を示している. (3) アレンとボウレーの定義に従って消費支出10費目の性質をとらえると, うち5費目の性質が世帯間で異なり, 家具・家事用品は専業主婦世帯で奢修品であるのに対し共働き世帯では下級品, 被服および履物は前者で下級品, 後者で必需品, 保健医療, 教養娯楽は前者で奢修品, 後者で必需品, その他の消費支出は前者で必需品, 後者で奢修品である. (4) 消費支出構造に関与する因子は, 専業主婦世帯では, 生活発展因子, 生活充実因子, 定期支出因子の3因子, 共働き世帯では生活発展・充実因子, 定期支出因子の2因子である. (5) 消費支出10費目にクラスター分析を実施すると, 専業主婦世帯の消費支出は, 食料, 被服および履物のグループと生活発展・充実グループ, 共働き世帯の消費支出は, 生活発展・充実グループ, 定期支出グループ, 随時支出グループに分けてとらえることができる.