愛玉子水抽出液が, 無添加のままでゲル化する現象に注目し, ゲル化挙動とゲル形成に関与する子実内在の構成成分を検討し, 以下のような結果を得た. (1) 粘性挙動の経時変化から, 愛玉子水抽出過程のゲル化挙動を観察することができた.濃度が高いほど, 粘度上昇時間が早く, ゲル構造の安定化に要する時間も短かった. (2) 愛玉子水抽出液にペクチンエステラーゼ活性が認められた.弱アルカリ性および塩化ナトリウム存在下で活性が高まり保存により活性が低下するという典型的な植物由来のペクチンエステラーゼであることに加えて, 愛玉子水抽出液に相当するpH5前後の弱酸性側においても活性が認められたことは興味深いことであった. (3) 愛玉子水抽出液は, 抽出直後より徐々にゲル化し, 3%抽出液では4時間, 4%抽出液では2時間で硬さのピークを示し, その後ゲルの硬さは減少し, ゲル構造の脆弱化が観察された. (4) 愛玉子水抽出物の構成糖を定量した結果, 主成分は, ガラクチュロン酸であるが, グルコース, アラビノース, キシロースなどの中性糖が定量された.果実ペクチンのようにラムノースをほとんど含まないことから愛玉子多糖はねじれをもたない直鎖分子であると考えられる. (5) 愛玉子水抽出物中の無機元素を高周波誘導結合プラズマ (ICP) 発光分析法で分析した結果, 5%前後の無機元素量が定量され, その中でK+が53.1~66.7%, ついでCa2+が21.3~31.5%を占めていた. (6) 赤外線吸収スペクトル分析の結果, 愛玉子の水溶性多糖にはペクチンに特有な吸収が認められ, イオン性カルボキシル基の吸収がLMペクチンに比べ大きかった.