バタースポンジケーキ製造における生地気泡量の変化に対する固体脂の影響を検討するため, 生地およびケーキの構造を走査電子顕徴鏡で観察した. 試料は, 卵と砂糖を起泡し, 小麦粉を添加攪拌し, 最後に生地にサラダ油または融解した硬化魚油を添加攪拌して生地をつくった. (1) 油脂添加前生地と油脂添加生地の気泡含量を比較すると, 硬化魚油生地はサラダ油添加生地よりもとくに差が大きく気泡含量が少ない. (2) 油脂添加前生地の組織は, 小麦粉が卵と砂糖と水でできた連続相中にほぼ均一に分散している, しかし一部は小麦粉の集合体がみられでんぷん粒の存在も確認された. (3) 油脂添加前生地に添加攪拌した油脂はサラダ油の場合, 連続相に油滴として分散し, 融解した硬化魚油の場合は気泡界面に油滴が付着した形態で存在する.そして硬化魚油を添加した生地の気泡含量は, 添加前の生地よりいっそう減少しているので, 気泡界面に油滴が存在することが気泡減少の原因と考えられる.さらにこの油滴中に結晶脂肪がみられ, この現象がいっそう気泡含量の低下を招くことになる. (4) ケーキの構造は, 生地中で独立気泡として存在した気泡が焙焼により気泡内圧が高圧になり破裂した結果, 空気が連続的に存在する多孔質な網目構造になる.油脂を添加したケーキの網目の表面は滑面と粗面がある.滑面中には扇形の結晶した脂肪と思われるものが存在した.