(1) シロギス鮮魚肉のATP, ADP, AMP, IMPの総量はヌクレオチドおよび関連化合物の総量の85%に当たる7.9μmol/gであり, その内IMPが90%以上を占めた.イノシン (HxR) とヒポキサンチン (Hx) の合計量は1.4μmol/g (総量の15%) であった.すり身を冷蔵するとHxRやHxが徐々に増大し, 13日後にHxの量が約90%を占めた.食塩添加すり身を貯蔵した場合はHxRの生成はあったが, Hxの生成は抑制され, 13日後も全体の40%であった.ソルビトール添加すり身の値は無添加すり身と食塩添加すり身の値の中間値であった.冷凍貯蔵の場合, ソルビトールの添加の有無にかかわらず食塩無添加すり身ではヌクレオチドの減少も少なく, HxRやHxの増加も少なかった.食塩添加すり身では10日頃からHxRの増加がみられたが, Hxの生成はなかった. (2) すり身を食塩無添加で冷蔵, 冷凍貯蔵すると, 魚肉だんごの破断応力が新鮮魚肉で作っただんごの50~60%に低下したが, 食塩添加すり身で貯蔵すると破断応力の低下はまったくなかった.ソルビトールの添加効果は顕著でなかった. (3) 魚肉だんごの官能検査の結果, すり身を冷蔵した場合は食塩添加すり身のほうが歯ごたえ, 弾力, きめ, 総合評価で無添加のものより高く評価された ( p <0.01).冷凍貯蔵の場合も食塩添加のものが歯ごたえ, 弾力の点で高く評価された ( p <0, 01).ソルビトールの添加効果は顕著でなかった. 以上の結果から, 魚肉すり身に食塩を添加して貯蔵するとHxRからHxへの分解が抑制されること, また魚肉だんごの物性・食味特性の低下も抑制されることが明らかになった.