澱粉特性がクッキーの品質に及ぼす影響を調べるため, ワキシーコーンスターチ (WCS) とハイアミロースコーンスターチ (HACS) という, 糊化特性の異なる二種類の澱粉を用いて単純化した配合のモデルクッキーを調製し, これを物性測定と官能検査により評価した. WCSクッキーはHACSクッキーとくらべ, 垂直方向に大きく膨化し, スプレッド (焼き広がり) は小さくなった.物性測定と官能検査のいずれにおいても, WCSクッキーは硬く, HACSクッキーは顕著なショートネスを示した.走査電子顕微鏡で観察してみると, 脱脂したWCSクッキーには連続的な構造が認められ, これが膨化や硬い物性の原因と考えられた.両クッキーともに糊化度は非常に低かったが, WCSのほうがHACSクッキーよりわずかに糊化度が高かった.示差熱分析と電子顕微鏡観察から, WCSの粒子がクッキー中で一部糊化していることが示唆された. 澱粉の糊化による連続構造はクッキーを膨化させ, 最終製品を硬いものにしてしまうことが推察された.したがって, ショートなもろい食感のクッキーを作るうえで, 澱粉糊化の阻害は重要であると考えられる.