ホウレンソウの貯蔵による葉緑体の形態変化を明らかにするため, 貯蔵方法と温度を変えて3日間貯蔵した試料の成熟葉を, 光顕と電顕により観察し, その結果と葉緑素量の変化を合わせて検討した. (1) 葉緑体の形態は, 3日間の貯蔵により, いずれの貯蔵条件においても変化することが認められた.貯蔵温度は高いほど退化が速くすすみ, また, 包装条件では無包装の場合に退化の速いことが認められた.包装袋の使用は, 葉緑体の形態変化の遅延からみても有効であるといえる.いずれの貯蔵条件においても, 葉緑体の退化過程では同様の形態変化がみられた. (2) 葉緑素の測定結果は, 葉緑体の形態変化とよく一致し, 葉緑体の退化の程度がすすんだものほど葉緑素の残存率が低下していた. 以上の結果から, 貯蔵による時間経過や環境変化によって葉緑体の形態に変化が起きることがわかった.