サバ肉を酢酸食塩液および酢酸液に浸漬処理し, 対照としての無処理肉, 食塩液浸漬肉とともに4℃で7日間保存した.これらの酢漬処理による呈味成分の変化を調べようとして, 遊離アミノ酸および核酸関連物質の測定を行い, 次の結果を得た. (1) 酢酸食塩液および酢酸液に浸漬したサバ肉では, いずれの遊離アミノ酸も保存中にかなり増加しており, とくに, アスパラギン酸, バリン, メチオニン, イソロイシン, ロイシン, チロシン, フェニルアラニンの増加が顕著であった. (2) ATP は, 対照の無処理肉, 食塩水浸漬肉には残存していたが, 酢漬肉には残存せず, ADPは酢酸食塩液浸漬肉にはみられず, 酢酸液浸漬肉にわずかにみられ, 対照肉にはかなり残存していた.IMPは, いずれの処理肉においても経過日数とともに減少し, HxRは逆に増加していた.IMPは酢漬処理を行ったほうがより減少していた.そして酢漬処理肉では, HxRが対照肉よりも多く存在し, Hxが少ないことが示された. (3) 酢酸と食塩を含む液に酢漬処理肉においてとくに増加していたアミノ酸 (アスパラギン酸, メチオニン, バリン) を添加すると, アミノ酸無添加の液より, 味がまろやかでうま味が強いことが官能検査によって示された. サバ肉の酢漬処理によって遊離アミノ酸が増加し, これらがしめさばのおいしさに関与していることが示唆された.