渋柿および甘柿を試料として, 成育中の可溶性タンニン濃度およびタシニンの不溶化すなわち脱渋に関係すると思われるアセトアルデヒドを生成する, PDCおよびADH活性の推移を測定した.また種々の渋柿の脱渋処理前及び脱渋操作の一つであるエタノール処理および干柿の調製時におけるそれらの変動を調べた. (1) 渋柿として平核無甘柿として富有柿を6月より11月まで調べた結果, 可溶性タンニン濃度は富有柿も6~7月には0.7%以上とかなり高い値であるが, 9月以降は渋味を感じなくなる (約0.1%以下) まで減少した.両酵素活性も常に大差なく存在していた.渋柿では成育初期には可溶性タンニン濃度が甘柿より著しく高いが, 成熟期になると減少していった.また各採取時期における渋柿をエタノールによる脱渋処理を行った場合にも可溶性タンニン濃度の減少が認められるが, その濃度が3%以上のときは24時間の処理時間では, 脱渋の目的が果たせず, 濃度が1%以下のときには脱渋できることがわかった.渋柿でも両酵素活性がどの時期にも存在し, PDC活性はADH活性より高いことも判明し, 1個あたりでは成熟するに従い, 両品種とも増加することがわかった. (2) 実験に供した市販の渋柿をエタノールによる脱渋処理を行った結果, 1品種以外は脱渋できた.その脱渋できなかった1品種にはADH活性が認められなかった。しかし, ADH活性が認められなかった品種でも脱渋が可能だった品種もあった.PDC活性はどの品種でも認められ, ADH活性よりもかなり高かった. (3) 干柿はイオウ燻蒸をしすぎると渋味が残る場合があるといわれている.そこでイオウ量を標準および2倍量と, 無処理のものと比較した.その結果イオウ燻蒸しない区が1週間でいちばん早く脱渋できた。ADH活性はいずれも消失したが, PDC活性は存在していた.その量は乾燥による重量の減少を考慮すると, どの区でも大差なく, 常にかなりの特性が認められ, 干柿の脱渋にはPDCが関与することがわかった.