老後の家庭生活の充実に向けて, 老年期を前にした夫妻の家事協力の現状を分析したところ, 以下の結論を得た. (1) 夫の家事参加の実態は, 妻の職の有無・勤務形態および曜日により異なる.妻が常勤の夫の家事分担率は他の夫に比して高いが, 家事全体の約1割を分担しているのにすぎない.全体的に, 平日より土曜日, 休日の夫の家事労働参加が多く認められる. (2) ほとんど家事を行っていない夫の妻よりも, 日常的に家事を分担している夫の妻の方が, 夫の家事参加に対する期待をもっており, 現在の分担状況を不十分と考えている傾向が認められる. (3) 夫妻ともに「生活者」として主体的に過ごす老年期へ向けて, 夫の今後の家事労働への一層の参加が期待される.そのためには, 固定化した性別役割分業観の解消と, 夫の生活参加を可能にする生活様式の確立が求められる.