現代社会において生活を営んでいく上で必要不可欠である「お金」に対して及び「お金」に付随することがらに対して, 現代の子どもたちはどのように感じ捉えているのかについて, 子どもの自発反応を手がかりとして, 幼稚園年長組幼児, 小学2年生, 小学5年生, 中学2年生, 高校2年生を対象に, 発達的視点から明らかにすることを試みた. (1) 子どもの金銭に対する感じ方は以下のようである. (1) 幼児は「お金」にかかわることがらのイメージとして, 具体的なモノを回答する例が極めて多い. (2) 小学生は, 「お金」や「お金持ち」に対して「欲しい」「いいな」などのストレートなプラスの情緒反応を示す傾向が強い. (3) 「お金で買えないもの」に対しては, 幼児を除く4群では多数の者が「いのち」「人間」と回答する. (4) 中学2年生は「高いもの」として過半数が「家」「土地」を挙げていることから, 社会的背景や現代社会の経済活動の現状にも目が向いてくることがうかがえる.また, 彼らは「お金持ち」に対して「けち」「欲ばり」などのマイナスの情緒反応も示し始める. (5) 高校2年生では「たくさんお金があったら」に対して「遊んで暮らす」の回答が1割以上の生徒から提出されたが, 一方では「お金で買えないもの」に対して, 中学2年生とともに, 「愛」「こころ」「友人」の回答が多く提出され, 情緒的な人間関係の結びつきを強く求める姿勢がうかがわれる。 (6) 地域差については, 中学2年生が都市部と郡部の差が少なく, また, 郡部の子どもは「お金」「お金持ち」に対してプラスの情緒反応をより多く示している. (2) 買い物の頻度は個人差が大きく, 買い物に行く時の所持金額は発達的な差が認められ, 年齢上昇とともに高額になる. (3) 職業選択の理由で「もうかるから」は全体的には少数派であるが, どの発達段階にも若干認められ発達的な差は見られない.しかし, 男子は女子に比べて有意に多い. (4) これらの結果から, 子どもの金銭感覚は具体性の強いモノとの関連で捉えられる段階から出発し, 人との関連の中で捉えるようになり, 社会機構に対する認識の深まりに伴い抽象的な価値と関連づけて捉えるようになる段階に至る, と言えよう。そして, その発達過程の過渡期である小学生期には極めて強いお金自体への志向性を示す傾向が認められる.