高齢者の居住環境における温熱的対応の仕方の特徴を明らかにすることを目的として, 気候・風土的特徴の異なる地域に居住する高齢者を対象に, 日常の生活空間や行動様式, 室内環境や暑さ, 寒さへの対応の仕方などについてアンケート調査を行い, 加齢による共通的特性と環境の違いから招来される特異的特性の把握に主眼をおいて, 分析を行った. 本研究は5報から構成されているが, 本第1報においては調査の概要および高齢者の生活基盤と日常の生活行動にみられる特徴について, 地区差, 年代差, 季節差, 性差などの点から把握した.結果を要約すれば次のとおりである. (1) 高齢対象者の約半数が彼等の子供または家族と同居しているが一人暮らしは全国平均よりかなり高率を示している. (2) 地区差が認められる項目には入浴行動や活動時間帯があり, 高緯度地域のほうが低緯度地域に比べて, 入浴回数は少ないが入浴時間は長く, また, 気分よく動ける時間帯も「午後」または「午前, 午後どちらでもよい」とする者の数が多い. (3) 年代差は体格, 睡眠中のトイレ回数, 睡眠行動や家事活動など主に身体の生理機能に関わる項目に顕著に認められ, 高齢ほど身長・体重の減少と痩身傾向がみられ, トイレ回数は増加し, 睡眠時間は延長, 家事作業への参加度は低下する. (4) 冬季は夏季に比べて睡眠中のトイレ回数が増加し, 起床時刻の遅延による睡眠時間の増加, 昼寝をしない者の増加, 入浴回数の減少と時間の増加, 活動時間帯を特定しない者の増加など, 季節による影響も顕著である. (5) 女性は男性に比べて就寝時刻が遅く, トイレ回数は少なく, 入浴回数は少ないが時間は長い.また, 持病や自覚症状が高率に現れる傾向が認められる.