卵白の泡を利用するには, 起泡力と安定度が要求される.そこで, 起泡力を向上させ, 安定度の高い泡を作るには泡立ての動作はどのようにしたらよいのかを知ろうとして, 泡立ての動作に関連している各筋, 各筋群の収縮活動の強弱を筋電図により調べ, 起泡力との関係を探った. (1) 卵白の起泡力と安定度との間には, 高度に有意な正の相関が認められ, 起泡力が高いものは安定度も高いことが示された. (2) 卵白の泡立て動作時の上腕二頭筋 (屈筋) ((1)), 上腕三頭筋 (伸筋) ((2)), 前腕屈筋群 ((3)), 前腕伸筋群 ((4)) の4つの筋, 筋群の総積分筋電量と起泡力との相関をみるとγ=0.70 ( p <0.01) で有意な正の相関があり, 総積分筋電量が大きい人は起泡力が高くなることが示された. (3) 前腕と上腕の屈筋についての積分筋電量の比である屈筋比 ((3) '/ (1) ') の高い人ほど起泡力は高くなった (γ=0.51, p <0.05).また, 上腕二頭筋をあまり使わない人ほど起泡力が高くなることが示され, 起泡力を高くするには, 上肢を拘束しない程度に脇をしめ, 手首を主に泡立て動作を行うと泡立ちがよくなるであろうことが示唆された. (4) 泡立て回数と起泡力との関係をみると, 正の相関関係があり, 一定時間の泡立て回数が多い人ほど起泡力は高くなり, 起泡力を高くする要素の一つとして泡立て回数が関係することが認められた. (5) 総積分筋電量に対する上腕二頭筋の積分筋電量の割合 {(1) '/ ((1) '+ (2) '+ (3) '+ (4) ')} と泡立て回数との間には負の相関があり, 上腕二頭筋を使う人ほど泡立て回数は少なくなった. (6) 泡立て1回に要する総積分筋電量と起泡力との間には正の相関があり, 卵白を打つ力の強さが強い人ほど起泡力は高かった. (7) タッピングテストおよびマッチボードテストの得点と起泡力を比較すると, それぞれの得点の高い被験者の起泡力が高いという興味ある結果が得られた.