アルカリプロテアーゼによるカゼイン分解で観察された酸化剤の相乗効果が他のタンパク質BSA, OvA, ゼラチンについても生じるかどうかをGPCによる分解挙動の追跡から検討した. その結果以下のことが明らかになった. (1) GPC法によりBSA, OvAは, 分解物と非分解物のピークが区別されたので, 酵素による分解挙動の追跡を明確に行うことができた. しかし, 広い分子量分布のあるゼラチンは, 分解物と非分解物とが別のピークにならないことから数平均分子量を算出し分解状態を追跡した. (2) 3種の基質のNagarseによる40℃, pH10.5での分解速度には差があり, OvAの分解性が他と比較して著しく低く, BSAの約1/50程度であった. また, OvAは, 40℃, pH10.5での予熱時間が長い程分解速度が高まることがわかった. (3) 酸化剤のNagarseによる基質分解に対する相乗効果は基質の種類により異なる. OvAでは過炭酸ナトリウム10mMの添加により無添加系と比較して分解量が160%程度まで高まったが, ゼラチンでは110%程度であった. しかし, BSAでは相乗効果が生じなかった. (4) 基質により相乗効果に差が生じたことから, その理由を基質, 酸化剤共存系での基質タンパク質の分子量変化, 系中での酸化剤の消失挙動, 予熱時間が酵素分解に及ぼす影響から調べた. 酸化剤により相乗効果が生じたOvA, ゼラチンの場合は分子量の低下が認められたが, BSAでは, 少し高分子量化していることが分った. これらの結果と前報でのカゼインについての結果から, 酸化剤により対象とするタンパクが程度の差はあれ少し分解される場合に, 酵素による加水分解速度が加速され相乗効果が生じると推定した.