年齢3~6歳の幼児208名 (男児120名, 女児88名) とその両親416名を被検者として, 甘・酸・塩・苦味食品に対する嗜好調査を行い, 幼児とその両親の嗜好パターンの相異ならびに両者の嗜好の相関関係を林の数量化理論により分析した. またショ糖 (甘味), クエン酸 (酸味), 塩化ナトリウム (塩味) の等差濃度水溶液を検査試料として, 幼児 (76名) の味覚閾値を20歳女子学生 (98名) と比較検討し, さらに幼児の各味溶液に対する表情についても観察した. 結果は次のようであった. (1) 幼児の食味嗜好傾向はその両親とは異なり, 性別による嗜好の違いは両親と比較すると大きかった. 男児, 女児に共通する嗜好食品はアイスクリーム, チョコレート, ショートケーキなどの甘味食品であったが, 特に女児の嗜好食品は夏みかん, グレープフルーツなどの酸味食品であった. (2) 幼児とその両親の間に高い相関がみられた嗜好食品は, 塩から, つけ物, セロリー, パセリ, グレープフルーツのような塩・苦・酸味食品であった. (3) 幼児では, 甘・酸・塩味に対する味覚閾値は20歳女子学生に比べていずれもやや低く, ショ糖水溶液濃度0.2~0.8%, クエン酸水溶液濃度0.02~0.06%, 塩化ナトリウム水溶液濃度0.04~0.16%の範囲で大部分の者が感受した. (4) 幼児は, 甘味では快い表情, 塩味ではやや快い表情, 酸味では不愉快な表情を示すことが観察され, それぞれの味質の違いによってその反応が異なった.