干ししいたけのもどし汁の嗜好性を高めるため, 卵白および食酢の添加により褐色度の軽減とアク味の除去を試み, 以下の結果を得た. (1) 食酢を0.5%添加後, 卵白を3~5%加えたもどし汁の吸光度は原液に比べて著しく低下し, 灰分量も減少した. しかし, 卵白量の多少による効果の差異は吸光度では認められず, 灰分量は卵白5%添加の方が3%, 4%添加に比べて少なかった. (2) もどし汁のpHを5.40から4.60まで0.20ずつ低下させて卵白を3または5%添加したところ, 吸光度はいずれの卵白量でもpHが下がるにつれて低下し, pH4.60で最も低くなった. また, 吸光度の低下の度合は, ほとんどのpHで卵白量5%よりも3%の方が大きかった. 一方, 灰分量は吸光度と逆にpH5.40の試料で少なく, pH 4.60の試料で多かった. (3) 卵白添加後の沸騰継続時間を2分, 5分, 10分, 15分, 30分としてその影響を見たところ, もどし汁のpH4.60, 5, 20のいずれも, また, 卵白量3%, 5%ともに吸光度および灰分量にほとんど差は認められず, 卵白添加後の沸騰時間は2分で充分であると判断された. (4) アク味成分のうちK, Mg, Caのもどし汁への溶出量を調べたところ, それぞれ430~570mg%, 28~36mg%, 0.16~0, 26mg%でKが最も多かった. もどし汁のpH, 卵白添加後の沸騰時間とK, Mg量との関係について見ると, 沸騰継続時間の短い方が含量が多く, 長い方が少ない傾向が認められた. この傾向は, pHを520に調整したもどし汁に比べてpH4.60のもどし汁のほうが顕著であった.