現在, 一般に広く使用されている農薬散布作業服を中心に, 素材, 開口部の異なる作業服7種について, サーマルマネキンを用いて, その熱抵抗及び蒸発熱抵抗の評価を試みた.また, 人体着用実験によって, これらの結果を検討するとともに, 防水密閉型防除衣Aについて, ブロア及び簡易冷却袋 (アイスノン) を併用した場合の効果についても試験的な実験を試みた.主たる結果は次の通りである. 1) 同一素材で開口部が異なる防除衣A, B, C, Dを比較した結果, 静止気流下の熱抵抗に及ぼす開口部の影響は僅少であるが, 有風下では開口によって著しく衣内温度が低下した.蒸発熱抵抗は静止気流下でも開口部の拡大に伴って低下し, 開口部が大きいほど衣内湿度は低く, 水分蒸発量は多く, 衣服付着水分量は少なく, 水分透過性に及ぼす開口部の影響大なることが示された. 2) 同一開口・形態で素材の異なる防除衣D, Eを比較すると防水布に比して透湿防水布の防除衣は, わずかに熱抵抗が大であるが大差なく, 一方, 蒸発熱抵抗は約1/2の小さい値を示した.また, これに伴い透湿防水布防除衣の平衡衣内湿度は低く, 蒸発量は多く, 衣服付着水分量は少なく, 素材の透湿性が防除衣の水分透過性に及ぼす影響は大であることが示された. 3) 着用実験による結果は, マネキン実験よりバラツキが大であるが, 防水密閉型防除衣Aでは運動時の衣内温湿度が顕著に増大し, 有風下の衣内温湿度は, 密閉>開口, 防水>透湿防水と, マネキン実験と同様の傾向を示した. 4) しかし, 防除衣単独で最も評価が高かった透湿防水素材・開口型の防除衣Eも, マスク, 手袋, 長靴などの装備をつけると衣服気候は悪化した.これを解消する方法として, ブロアの使用は効果的であることが示唆された. 5) Mecheelsらの式により, Ta.min, Ta.maxを試算した結果, Ta.minはいずれの防除衣でも大差ないが, Ta.maxは, 50%RH時, 28.5℃~33.9℃の差をもたらし, 防除衣改良の効果は, 適応気温の上限に影響することが示された.