煮熟野菜の軟化に及ぼす金属塩化物の影響を検討するために, ダイコンの円盤を各種塩化物溶液中で煮熟した.以下の0.2M溶液中で煮熟したとき軟化の程度, 煮汁中に溶出したペクチン質量, 組織中に残存した水可溶性ペクチン質量は塩化第二鉄>塩化ナトリウム>塩化カリウム>塩化マグネシウム>蒸留水>塩化カルシウム, 塩化アルミニウム, 塩化第一鉄の順で大であった.円盤の軟化とペクチンの溶出の間に相関があった.このことから塩化カリウム, 塩化ナトリウム, 塩化マグネシウムはペクチン質の溶出を促進し, その結果, 野菜の軟化に影響を及ぼすことを明らかにした.塩化カルシウム, 塩化アルミニウム, 塩化第一鉄はペクチン質の溶出を阻害し, そのため野菜を硬くした.塩化第二鉄溶液中で煮熟した円盤は煮汁が強酸 (pH0.9) のため非常に軟化した. 調理後の溶液のpHは塩化物の種類や濃度により異なった.煮汁のpHは円盤の軟化にも影響を及ぼした.塩化カルシウムと酢酸カルシウムはダイコンの煮熟軟化に対する影響が大きく異なった.煮汁のpHとカルシウムイオン濃度と比べると, pHのほうがカルシウム濃度より煮熟軟化への影響が大であった.