中国四国地域における女性のネットワークを居住地域, 職の有無, 年齢階層別に分析した結果, 次の結論を得た. 1) 居住地域別に接触リンケージを比較すると, 農村においては近隣関係と, 漁村においては親族との交流が他地域に比べ多い. 2) 本調査で挙げた調査項目のような緊急事態が発生した場合には, 自分や家族内で処理することも少なくない.中でも, 市街地はその傾向が他地域に比べ強い. 3) 2) と関連して市街地においては, 公共機関の利用を希望してはいるが, 積極的に評価する者が少ない.個人レベルでも, 地域の助け合いが不十分であると感じ, ネットワークの拡大も希望はしているが, 実際の行動として「町内行事への参加や世話」は消極的であり, 拡大努力はなされていない. 4) 職業の有無別では, 日常時の交流リンケージはいずれも親族の割合が高い.別居親族以外で第1位に挙げられているリンケージは, 有職では職業関係, 無職では近隣関係である.しかし, それらのリンケージは緊急時には十分な機能を果たしていない. 5) 有職者は無職者に比べ現在の交流人数は多い.更に, 個人ネットワークの拡大を希望している.しかし, 積極的に努力しているとは言い難い。 6) 年齢階層別では, 年齢層が高い程日常時のリンケージ利用度は低くなるが, 緊急時のリンケージ利用度は高くなる. 7) 若年層では, ネットワークに対する自己評価が低く, 拡大希望は高いが, 拡大努力は消極的である. 以上の結果から, 農業や漁業を通じて築かれたような強いネットワークを持たない市街地において, また, 今後は市街地化の進む農漁村においても, 緊急時に頼ることのできる公共機関・制度の充実が望まれる。 有職者・若年層はネットワークの拡大希望はしているものの努力が十分でないという点で共通している.これらの者には, 今回の調査でネットワーク拡大努力を尋ねる項目に挙げた町内会のような既存の組織に魅力を感じられないのではないだろうか.従来からある組織には必ずしも参加を希望してはいないが, 公共機関の充実は期待しており, 公的なものを排除しようとしているわけではない.今後, 地方において若年層や有職者がネットワークをどのように拡大させたいと希望しているか, また, それを実現するための公共機関のかかわり方について検討する必要があろう.