代表的な獣鳥肉および魚肉類を急速または緩慢に加熱調理した際の, 遊離アミノ酸, ATP関連物質およびその他のエキス成分の変化と, それらの変化が味の強さに及ぼす影響を検討した.その結果は次のように要約できる. 1) 加熱過程で, Glu, Ala, Val, Leu, Phe, Lysなどの遊離アミノ酸, HxR, Hxの量は増加したが, IMPの量は減少した.多くの場合, その傾向は急速加熱に比べ, 緩慢加熱において顕著であった.ペプチドは魚肉類では少なく, 獣鳥肉類では魚肉よりかなり高い値を示したが, いずれも加熱中の変化はほとんどなかった.クレアチンは肉の種類や昇温速度にかかわらず加熱中の変化は少なかった.総エキス窒素量はとくに赤身魚類に多く, 加熱中に生成する遊離アミノ酸にほぼ相当する量だけ増加する傾向がみられた. 2) IMPとGluの分析値を用い, 計算上の「うま味」の強さをYamaguchiの式によって算出した結果, マダイ, キハダおよびサケなどの場合は増加したが, イサキやウシの場合は減少した.これらの結果は, イサキ, ブタ, マダイなどの肉から調製した抽出液の官能検査によって判断した食味の変化とよく一致した.