高齢者の精神的充足感獲得の実態を調査し, それに関連する生活的・心理的要因を分析した.高齢期の精神的充足感形成に関連する要因として, (1) 高齢者をとりまく物理的・環境的状況に関する要因 : 家族構成において配偶者や孫と同居していること, 健康, 経済状態がよいことなど, (2) 自分の現状に対する高齢者自身の主観的評価に関する要因 : 他人や社会に対する貢献度, 家族との関係, 宗教・信仰などにおいて満足できていること, (3) 高齢期以前の要因 : 現役引退までの職業, (4) 人格的要因 : 主体的欲求をもっていること, の四つの側面が存在することが示唆された.高齢期の精神生活の質的向上のためには, これらの側面の状況の改善とともに, 高齢者の主体的欲求が実践できるような支援を行っていくことの必要性が考察された.