本研究は, 高齢者の精神的充足感形成に影響する家族の要因について検討した.その結果, 以下の点が示唆された. (1) 同居している家族による高齢者の「老い」の受容は, 高齢者の精神的充足感の獲得を助ける. (2) 高齢者が, 家族と互いに理解し合っていると認知していることや, 家族内での自分の存在意義を見出していることは, 精神的充足感を高める要因である. (3) 高齢者の老いの受容を助ける家族側の要因としては, 高齢者である親の人生評価と自分自身の人生評価が高いこと, 自分自身の老後の準備がよくできていることがあげられる. (4) 高齢者の精神的充足感と家族内コミュニケーションの問には, 統計的な有意差は認められなかった.しかし, 高齢者と家族の会話において, 互いに思いやりのある受容的な表現ができている場合には, 家族内によいコミュニケーションの循環が形成されており, これは高齢者の精神生活を支える重要な要因であると考察された.