増殖に必須な酵素の不活性化を通して低温菌の増殖を抑制することを目的として, 典型的低温細菌である Pseudomonas fluorescens 由来の不耐熱性アラニンラセマーゼの安定性を, Ba-cillus stearothermophilus 由来の耐熱性アラニンラセマーゼと比較して調べた.不耐熱性酵素は, 0.08%ラウリル硫酸ナトリウム, 1M塩酸グアニジン, 4M尿素, 45%エタノール, 50%ジメチルスルフォキシドとの30℃, 5分間のインキュベーションで50%の活性を失ったが, 耐熱性酵素はこれらの処理に対して耐性を示した, 不耐熱性酵素は, 耐熱性酵素に比べて, 変性剤や有機溶媒に対する耐性が著しく低いことが明らかとなった.不耐熱性酵素の変性過程を尿素を用い, 円二色性, K m値, 補酵素ピリドキサール5'-リン酸 (PLP) の結合量から調べたところ, 不耐熱性酵素は尿素濃度3.5M付近で生じる一段階の遷移状態を経て変性したが, 耐熱性酵素は二段階の遷移状態を経て変性した (4.0Mで補酵素の解離5.5Mで変性).