微量栄養素についての食料需給量は, わが国においては正確には把握されていない現状である.そこで本報では, 主にカルシウムと鉄の無機質の需給状況について, 栄養学的見地から分析した. 1) 「食料需給表」, 「日本貿易月表」, 「水産物流通統計」をもとに, 昭和40年, 45年, 50年と55年から62年の各年度における国民一人1日当たりの純食料からの供給栄養素量を, エネルギーと三大栄養素, カルシウム, 鉄について算出した. 2) それら供給栄養素量を「国民栄養調査成績」から求めた摂取栄養素量と比較したところ, エネルギーと三大栄養素は, 調査全年度にわたり供給量が摂取量を上回り, 十分量供給されていたことを本論でも確認した.しかし, カルシウムは22年間の全調査期間中, また鉄も調査年度によっては供給量が摂取量を下回っていた. 3) 昭和62年度について, 供給および摂取栄養素量の栄養所要量に対する充足度を検討した結果, カルシウムは所要量600mgに対して供給量545mg, 摂取量552mgとともに不足していることが明らかになった.また, 鉄については所要量を上回る供給があったものの, 必ずしも純食料からの供給だけでは十分とはいえなかった. 4) 様々な食品に添加物などの形態で加工過程で加わってくる純食料以外の供給部分を求め, 供給量に加えたが, カルシウムは所要量をカバーできなかった.しかし, それら加工品については正確な実態がつかめていないのが実状であり, 今後の利用増加が予想されることからも, 加工食品からの供給量の早期把握が望まれる.