ホウレンソウの部位別のアスコルビン酸量およびアスコルビン酸オキシダーゼ (AAO) 活性を測定し, 鮮度低下および吸水回復処理による変化を調べた.その結果, 次のようなことが認められた. 1) ホウレンソウは, 部位によりアスコルビン酸量および AAO 活性が異なり, アスコルビン酸は葉, 茎, 根の順で多く, AAO 活性はその逆で, 根部では葉の約200倍の活性が見られた.また, 根部のアスコルビン酸は葉や茎と異なり, 約 46% が酸化型であった. 2) 鮮度低下処理後に水温 30℃ の吸水回復処理により, ホウレンソウの葉および茎部では, LAsA の顕著な減少が見られ, そのときの AAO 活性は, 葉で新鮮時の約 5 倍, 茎では約 3 倍であった.一方, 根部では, 同処理により LAsA の減少のみ見られ, AAO 活性には変化がなかった.また, 水温 10℃ の吸水回復処理では, 葉部における AAO 活性増加はみられなかった. 3) 新鮮なホウレンソウを, 購入後ただちに水温30℃ の水に 24 時間浸漬する処理 A および気温 30℃ の環境に 24 時間放置する処理 B を施した結果, 両処理区ともに総アスコルビン酸の減少が観察されたが, 処理 A において DAsA の増加および AAO 活性の増大がみられた. 4) 本酵素の作用は, 30℃ の水浸漬による LAsA の減少に関して, アスコルビン酸関連酵素の一つとして関与している可能性が示唆された. 5) 葉菜類の調理素材としての品質維持に対し, 酵素作用の面における配慮の重要性が認識された.