本研究は牛肉の低温加熱による呈味物質と呈味性の変化についてみたものである. 牛肉を薄切りにし, 真空パックしたものを40, 60, 80℃で, 10分, 1, 3, 6時間加熱した.遊離アミノ酸は40℃, 6時間加熱したときにもっとも多く生成し, 酸可溶性ペプチドは60℃, 6時間加熱したときにもっとも多く生成した.60℃, 6時間加熱した牛肉エキスと, 60℃, 10分加熱した牛肉エキスの呈味を官能検査により比較すると, 60℃, 6時間加熱した牛肉エキスの方がまろやかだった.二つの牛肉エキス中の遊離アミノ酸, 5′-IMPはほとんど同量であったので, まろやかさは加熱によって増加したペプチドによるものではないかと考えられた.