アメリカ家政学会誌より抽出した研究対象論文のうち家政学原論領域に分類された739本を対象に, 年代別・中分類領域別の分析, および, キーワード分析を行った結果, 以下の諸点が明らかとなった. (1) 中分類領域別論文数から見た研究動向の数量的把握 1) 年代別・中分類領域別構成比に基づく分析の結果, 1910年代から1920・1930年代, および, 1940年代から1950年代に至る二つの時期に, 「家政学史・学説史」の構成比が大きく減少し, 「家政学論」の構成比が増加するという, 共通の時系列的変化が確認された. 2) 年代問のクラスター分析結果によって, 1910年代と1940年代, および, 1920・1930年代と1950年代の中分類領域構成上の類似性が確認され, 1) の結果が統計的に検証された. 3) 1) および2) の結果を総合的に判断して, 1910年代から1930年代を基本理念形成期, 1940年代から1950年代を基本理念再形成期とし, 1960年代から1980年代を「家政学論」と「家政学について」の割合の合計が7割を越えるという共通の特徴を持つ時代であると位置づけた. (2) キーワードに基づく研究動向の分析 1) 家政学の基本理念を構築する中で, 特に, その研究対象と範囲に関わる議論が, 家族と家庭を中心に展開されていた. 2) 家政学が学問としての地位を確立し, 新たな方向性を見いだす上で欠くことのできない学問論に, 常に高い関心が寄せられていた. 3) 専門職者・ホームエコノミストを世に送り出すという, 学問と職業の結びつきにおいて, また, 教育などの各種サービスを通して社会に貢献するというアメリカ家政学の独自性が見いだされた. 4) 生活の福祉向上のために, 直接政策に関わり, 特に立法活動を通して, 学会として社会貢献をしてきた歴史が見いだされた. 5) 家政学の基本理念や研究の過去の歴史を振り返り, その評価の上に立って, 将来あるべき姿の模索がなされていた.