鉄 (II) イオンの大豆煮熟軟化促進作用を明らかにするために, 鉄 (R) 塩溶液に大豆を浸漬したときの大豆中のペクチンの変化を対照と比較して測定し, 以下の結果を得た. (1) 塩化鉄 (II) 溶液に浸漬した大豆では水溶性ペクチンが増加したが, ヘキサメタリン酸ナトリウム可溶性ペクチンおよび塩酸可溶性ペクチンの量はあまり変わらなかった.水溶性ペクチンの増加は, 塩化鉄 (III) 溶液浸漬ではみられなかった. (2) 塩溶液浸漬後に蒸煮したときのペクチンの溶出は, 鉄 (9) 塩溶液浸漬で最も大きかった.また, 蒸煮によるペクチンの溶出は, 鉄 (II) 塩溶液浸漬後に食塩溶液につけることによって著しく促進された. (3) 硫酸鉄 (II) 溶液と食塩溶液に二段階浸漬した大豆の煮汁中のペクチンは, 対照に比べて低分子化していることがゲルクロマトグラフィーからわかった.