(1) 福岡県の北西部に位置する前原市において1989年2月から1990年2月まで毎月採集したヤマトシジミガイの全軟体部を内臓部分 (生殖腺, 中腸腺, 胃と腸) と筋肉部分 (外套膜, 水管, 足, 鯉, 閉殻筋) の二つに分け, 一般成分の分析を1年間にわたって行った. (2) 一般成分の年平均値は, 水分22.9%, 灰分1.1%, タンパク質12.5%, 脂質1.3%, 糖質2.5%, グリコーゲン2.4%であった.タンパク質と糖質は対称的な変動を示し, タンパク質含量は6月から9月に多く, 一方糖質含量は10月から翌年の2月に多かった. (3) 軟体部中, 内臓部分の割合は30~60%である.4月を最低に, 6月から8月にかけ最高で, 11月に向かって減少し, 以後少し増加した. (4) 化学分析の結果より, タンパク質含量の高い6月から8月ごろが「土用シジミ」で糖質含量の高い12月から翌年の2月ごろが「寒シジミ」と呼ばれる旬であると推定した. (5) 生殖腺の組織切片の観察より, 放精放卵は9月から10月にかけて開始していることが分かった.