近年, 既婚女性の職場進出が進んだにもかかわらず, 家事・育児・介護は, ほぼ全面的に女性の肩にかかっている.本稿の課題は, 既存の統計データを用いて, 日本における女性の役割過重状態を, 諸外国との比較において明らかにし, その原因と解決策を提示することである. 洋の東西を問わず家庭責任は女性に偏る傾向にあるが, とりわけ家父長制直系家族の伝統をもつ日本や韓国では女性への集中度が著しく, 子育て期には退職をして家庭に入るというM字型の就業パターンを描き出す.家庭責任の女性への集中をもたらす要因としては, 性別分業的な社会構造, 家父長制イデオロギー, 周囲からの役割期待に加えて, 女性自身が女役割に自己を同一化していることがあげられる. 今日, 日本女性が陥っている役割過重状態を解消するには, 男女間における機会の均等だけでなく, 結果の平等や意思決定過程への平等な参加を実現し, 拘束や負担をも均等に分かち合うことが不可欠である.