食味の異なる2品種の米 (コシヒカリ, ゆきひかり) を昇温条件を変えて炊飯し, 米飯の構造や食味におよぼす影響を調べた. (1) 沸騰時では加熱時間が長くなるに従って, コシヒカリよりゆきひかりの方が, 残存液の液量が少なくなり, ゆきひかりの弱火では残存液が見られなかった. (2) 沸騰時の米粒の重量はコシヒカリよりゆきひかりの方が重く, ゆきひかりの弱火では炊き上がり米飯の重量より沸騰時の方が多くなった.また, 糊化度もゆきひかりの方がどの火力においても高く, この時点ではゆきひかりの方が糊化の進んでいることが分かった. (3) 炊き上がり米飯の重量と水分量は, ゆきひかりよりコシヒカリの方が少ないにもかかわらず糊化度はコシヒカリの方がいずれの火力においても高かった. (4) クライオSEM観察の結果, コシヒカリは加熱時間が長くなるに従い, 飯粒の中心部まで水が浸入し, でんぷんの水和が進み, 胚乳細胞の境界は認められなかった.一方, ゆきひかりは加熱時間が長くなっても, 中心部・中間部では胚乳細胞の境界が認められ, 膨潤に利用される水の少ないことがわかった. (5) レオメーターと官能検査の結果から, 加熱時間が長いほど, コシヒカリの方が軟らかく粘りの強い飯となることが分かった.ゆきひかりは加熱時間が長くなってもコシヒカリの硬さと粘りには及ばなかった. 以上のことから, ゆきひかりの炊き上がり米飯の糊化度や硬さ, 粘りがコシヒカリに及ばないのは胚乳細胞の構造や多糖組成などに起因すると考察した.