以上, 「時代の変化」と「社会の要請」に応える一方策として, 生涯発達の観点に立った家政学の体系化について考察を行ってきた.検討を進めるうちに, 近年の家政学部改編の中で注目を集めた概念の一つ「生涯発達」については, すでに『1984』において, 家政学諸領域の統合を果たす方法として提案されていた.本研究では, 人間の生涯発達を, 心理・精神的, 社会・経済的, 身体的の三つの観点からトータルにとらえることを考えた.さらに「1984定義」に基づく体系化を考究する上で, クリークモアの体系が有効であることがわかった.本稿では, クリークモア=今井モデルに, 松下の生涯時間という観点を導入し, 人間の生涯にわたる発達課題を解決するための生活環境の達成課題を配置した.このような体系化を試みるなかで, これまでの家政学のカテゴリー上の課題が明らかになった.なお, 総合科学としての家政学には, トランスディシプリナリティという方法論が必要になってくると思われる. 最後に, 家政学の細分化は家政学の全体像を見失わせるという指摘もある (『1984』, 42).本来, 体系化とは, 細分化した研究でも全体における位置づけを通して, 家政学の全体像を明確化することであると考える.本稿における体系化の試みが, これからの家政学に何らかのお役にたてれば幸いである.これからも家政学の本質を問い直しながら, 「時代の変化」と「社会の要請」に応えるための方策を模索していきたい.