しば漬中のアントシアニン色素について検討を行った.しば漬はナスなどの野菜とシソの葉を塩漬にした日本の漬物である.しば漬試料を50日間熟成させ, その間に, pH, 塩分, 乳酸量, ハンター尺度のL, a, bおよび吸光度を測定し, LC/MS分析によりアントシアニンを同定した.しば漬は20日目に最も濃い赤紫色となり, 相対色素量も最も高くなった.しば漬中のアントシアニンは, シソ由来の色素として, シアニジン-3, 5-ジグルコシド, シアニジン-3- (6-カフェイルグルコシド) -5- (6-マロニルグルコシド) [カフェイルマロニルシアニン], シアニジン-3- (6- p -クマリルグルコシド) -5-グルコシド [シソニン], シアニジン-3- (6- p -クマリルグルコシド) -5- (6-マロニルグルコシド) [マロニルシソニン] が同定された.また, ナス由来の色素として, デルフィニジンー3- ( p -クマリル-L-ラムノシルグルコシド) -5-グルコシド [ナスニン] が同定された.しば漬中の主要アントシアニン色素はナスニンであり, 特にその色調はしば漬中で安定であることが判明した.