市販キノコ11種類の加熱調理過程における5.Nt蓄積量とその組成, および5'-Nt生成機構について検討した.その結果は次のように要約できる. (1) -分析に供した市販キノコ11種は, いずれも加熱前には5.Ntを少量しか含んでいなかったが, キクラゲを除いて加熱処理によって, ATPは減少し, 5'-Ntは増加した. (2) -昇温加熱によって蓄積する5.Nt量は, ヒラタケ, ウスヒラタケ, シイタケ, ナメコ, オオヒラタケが比較的5'-Ntの蓄積が多く, マツタケ, マイタケ, ツクリタケ, エノキタケ, ブナシメジはその蓄積が少なく, また, キクラゲでは5'-Ntの蓄積はほとんど見られなかった.また, どのキノコにおいても5'-Nt蓄積量は昇温加熱で最も多く, 昇温速度の速い熱水加熱や電子レンジ加熱で少なかった. (3) -すべてのキノコにおいて, 加熱中に蓄積する5.Ntの中で最も量の多いのは5'-AMPであった. (4) -キノコの加熱過程で生成する5.NtにはRNA由来のものとATP由来の5.AMPとがあり, RNAの分解が速やかな種類のキノコほど5'-Ntの蓄積量が多くなり, RNAの分解が遅い種類のキノコほど5'-Nt中で5.AMPの占める割合が大きくなる傾向が認められた.