家庭科教育シリーズが始まり, 環境と家庭科教育という題で何か書くようにとの依頼を受けて以来, 考えもまとまらないうちに月日が経ってしまっていた.年が明けて平成9年の元日, 例年と同じように分厚い新聞を手にし, まずはじめに目に入ったのは朝日新聞の特集記事「環境'97」の「次の世代に美しい地球を」という大見出しの文字であった.オゾン層の破壊, 酸性雨, 海洋汚染, 生物多様性の減少, 森林の減少, 廃棄物の越境移動, 砂漠化.これらの地球環境問題は, この元日の新聞に限らず日頃の新聞や雑誌の記事で, またテレビの報道でしばしば取り上げられており, 私たちはそれらについて多くの情報を得ている.5年前にブラジルで開催された地球サミットでは, これらの問題を解決するために「持続可能な開発」の考え方が提示され, 行動計画「アジェンダ21」が採択され, さまざまな取り組みが進んではいるが, 地球環境は依然として厳しい状態が続いていることが報じられている.一方, 身近な生活環境に目を転じると, ゴミ問題, 大気の汚染, 水質汚濁など生活に直接関係のある問題もますます深刻な状態にある. このような地球規模での環境問題を含む, 様々な環境・公害問題を解決するために, 環境問題への人々の関心を高め, 人材を育成しようとする環境教育の重要性が認識され, 消費者教育の場である家庭科教育でも, 年々環境教育の視点に立ったカリキュラムが取り入れられるようになってきている.最近では, 上述のように情報に接する機会は多く, 環境教育においても知識の習得は進んでいるというが, 行動面での学習がなかなか伴わないとの指摘を耳にする.今後は, 実践活動を伴う家庭科教育の場での環境教育はますます重要になってくると思われる.そこでこの機会に, まず, 環境問題や環境教育について基本的な考え方を整理し, 家政学は環境教育について家庭科教育とどのようにかかわることができるのかを考えてみたいと思う.