凍結解凍したモンゴウイカ外套膜の, 加熱による物性および構造の変化を調べた. レオメーターを用いた剪断力の測定結果から, 加熱により軟らかくなることが確認された. また光学顕微鏡を用いた観察によれば, 加熱の進行にともない筋細胞間に間隙が生じたが, 透過型電子顕微鏡観察によればこの間隙は認められなかった. この結果, 光学顕微鏡観察において認められた間隙は人工産物である可能性が高いが, このことは筋細胞間の結合力の低下を示すものと思われた. また, コラーゲンのゼラチン化率は加熱60 分後に約32% まで上昇した. 以上の結果より, イカ筋肉は加熱により軟らかくなるが, これは筋細胞の構造破壊以外に, 筋細胞の間に存在する比較的少量のコラーゲンのゼラチン化によるものと考えられた.