本報は, 1995年, 東京都世田谷区において実施した生活時間調査データを用いて, 夫妻の社会的・文化的生活時間の現状を生活時間全体の構造およびジェンダーの視点から検討するものである.収入労働時間, 家事的生活時間, 全労働時間のジェンダー差が, 社会的・文化的生活時間に影響していることが明らかとなった。常勤妻の場合, 自由時間に影響を及ぼす他の生活時間要因の数がきわめて多く, それぞれの影響度も強かった.一方, 妻常勤の夫妻では, 団らんなど家族員との交わりや家庭生活文化形成に関するものの行動の比率が高いことが, 新たな傾向としてみられた.また, 収入と時間の選択に関しては, 妻常勤世帯だけでなく全体に, 家事等の外部サービスの支出により時間を捻出するよりは, 収入がへってもよいから労働時間を減らすことに共感する人が多かった.