凍結解凍品のケンサキイカ, スルメイカ, ムラサキイカ, モンゴウイカ, ヤリイカについて, 加熱調理にともなう外套膜の結合組織の構造変化を透過型 (TEM) および走査型 (SEM) 電子顕微鏡により観察した.TEM観察によれば, 加熱により筋細胞の構造が不明瞭になるとともに, 細胞間に不定形の物質が認められた.また10%NaOHにより細胞成分を溶出し, 残りの部分をSEMにより観察したところ, 細胞間に存在する未知の物質の立体構造が明瞭に観察された.アミノ酸組成の分析より, この構造物は主にコラーゲンにより形成されていることが明らかとなった.加熱後の筋肉をアルカリ処理後にSEMにより観察したところ, 細かいコラーゲン繊維の多くが凝集していた.またアルカリ処理後にTEMで観察した場合には結合組織の崩壊が認められた. 以上の結果より, 加熱によるイカ外套膜の軟化現象に結合組織の構造の崩壊が関与していることが示唆された.